朝のオフィス。
出勤した瞬間に空気が張り詰めていたり、誰も口を開かずにパソコンに向かっていたりする――。
そんな環境では、どれだけ自己管理を徹底しても、なぜか気分が落ち着かず、一日が重たく始まることがあります。
その理由のひとつが、脳内のセロトニン神経が環境要因によって抑制されていることです。
セロトニンは「心の安定」や「他者との共感」をつかさどる神経伝達物質。
個人の努力だけでなく、職場環境や人との関わり方によっても大きく左右されることが知られています(Young & Leyton, 2002)。
この記事では、職場という“場の力”を使ってセロトニンを高める3つの朝習慣を紹介します。
朝の「空間デザイン」が脳の安定を決める
セロトニン神経は、光・音・色といった感覚刺激に敏感に反応します。
Jenkinsら(2019)の研究では、自然光を取り入れた職場は人工照明中心のオフィスに比べ、従業員のセロトニン活性と気分スコアが高かったと報告されています。
つまり、朝の時間帯に「どんな空間で仕事を始めるか」が、その日のメンタルバランスを左右するのです。
実践ポイント:
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デスクの照明を“暖色→自然光”に切り替える
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観葉植物を視界に入る位置に置く(緑視にはリラックス効果)
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朝のBGMを自然音や穏やかなテンポにする
これらの刺激は「視覚・聴覚・触覚」を通じてセロトニン神経を穏やかに活性化し、脳を安定した覚醒状態に導きます。
他者との「同期」がセロトニンを強化する
セロトニンは「社会的ホルモン」とも呼ばれ、人とのリズムの同期によって分泌が促進されることがわかっています。
朝の短いチームミーティングや、挨拶・声かけなどの社会的スタートアップは、その日のセロトニンリズムを整えるカギになります。
たとえば:
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出勤時に「おはようございます」を声に出して言う
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1分の朝ミーティングで「今日のひとこと」を共有する
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チーム全体で立ったまま軽くストレッチする
こうした他者と同じ動き・リズム・呼吸を共有する行為は、脳の縫線核と前頭前野の同期を促し、チーム全体の心理的安定を高めます。
つまり、セロトニンを個人で上げるのではなく、チームで波長を揃えることが重要なのです。
「始業の区切り」をつくることで脳を守る
テレワークやフレックス勤務が増え、仕事の始まりが曖昧になった今、脳が休息モードから切り替わりにくくなっています。
セロトニン神経は、行動の「開始・終了」を明確にすると活性化します。
逆に、メールチェックやチャット対応などを“ながら”で始めると、脳は常に警戒モードになり、セロトニンが低下します。
そのため、出勤後の数分を「始業の儀式」に使うことが効果的です。
具体例:
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パソコンを開く前に、今日のタスクを紙に3つ書き出す
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最初の5分はスケジュールを見直すだけに集中
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“1つの動作”を区切りにして、仕事モードに入る
これにより脳内で「今日が始まった」というリズムが形成され、ストレスホルモン(コルチゾール)の過剰分泌を抑えつつ、セロトニンが優位になります。
まとめ ― 職場を「セロトニンが流れる場所」に変える
セロトニンを高める朝習慣とは、単に早起きやルーティンを続けることではありません。
それは、光・人・区切りという3つの要素を職場に取り入れることです。
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光や色で「感覚の安定」をつくる
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同期的な会話や挨拶で「社会的つながり」を生む
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始業の区切りで「脳のリズム」を整える
この3つが揃ったとき、個人のメンタルもチームの空気も整います。
朝の30分が“ストレスに強い職場”を育てる時間――。
今日の出勤から、少しだけ職場の「朝の風景」を変えてみませんか。