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「休職したい」と言われたときの初動

産業医実務対応シリーズ①

職場で従業員から突然、
「もう限界です。休職したいです」
と訴えられたとき、企業としても産業医としても最初の対応が極めて重要になります。

初動を誤ると、本人の症状が悪化するだけでなく、復職が長期化したり、職場の信頼関係が崩れたり、企業側の安全配慮義務の問題に発展することもあります。

本記事では、産業医・心療内科医の立場から、企業が取るべき「正しい初動」を整理します。


1. 「休職したい」は診断ではなくサインである

まず理解すべきことは、
「休職したい」という言葉は診断名ではなく、本人からの重要なサインだということです。

背景には、

  • 抑うつ状態

  • 不眠や疲労の蓄積

  • 適応障害

  • 職場ストレスの限界

  • ハラスメントや孤立

  • 身体症状(動悸・胃痛など)

など様々な要因が隠れています。

企業がすべき最初の対応は、判断を急ぐことではなく「状況を正確に把握すること」です。


2. 初動で最も重要なのは安心して話せる場を作ること

従業員が休職を口にする時点で、多くの場合すでに精神的余裕はありません。

この場面で管理職がやってしまいがちなNG対応は、

  • 「もう少し頑張れないか」

  • 「責任感が足りない」

  • 「休むと評価に影響する」

  • 「みんな大変なんだ」

といった叱咤激励です。

本人の訴えを否定すると、症状は悪化しやすくなります。

企業としての最初の一言はシンプルで構いません。

「話してくれてありがとう。まず状況を整理しよう」
「一度、産業医と一緒に確認しよう」

この受け止める姿勢が初動の土台です。


3. 企業がまず行うべき3つのステップ

ステップ① 緊急性の確認(安全確保)

最初に確認すべきは、本人の安全です。

  • 希死念慮がないか

  • 明らかな混乱やパニックがないか

  • 出勤継続が危険な状態ではないか

もし自傷他害のリスクが疑われる場合は、速やかに医療機関受診や家族連絡を含めた緊急対応が必要です。

なかなか判断できない場合は職場の産業医と情報共有して対応する子が大切になります。


ステップ② 事実確認(業務負荷と経過)

次に、本人の状態を責めずに整理します。

  • いつ頃から不調か

  • 睡眠は取れているか

  • 業務量・残業の状況

  • 職場で困っていること

  • 体調悪化のきっかけ

ここでは結論を出す必要はありません。

「状況を言語化すること」が第一です。


ステップ③ 産業医面談につなぐ

休職判断は企業単独で行うものではありません。

企業の役割は、

  • 医療的評価(産業医)

  • 就労可否判断(産業医+会社)

  • 制度運用(人事)

を適切に連携させることです。

したがって初動では速やかに産業医面談を設定します。


4. 産業医が初動面談で見るポイント

産業医面談では「診断名」よりも就労機能を評価します。

確認する軸は以下です。

①症状の程度

  • 抑うつ、不安、焦燥

  • 集中力低下

  • 身体症状

②生活機能

  • 睡眠・食事

  • 日常生活が維持できているか

③就労機能

  • 業務遂行が可能か

  • 判断力が落ちていないか

  • ミスや事故リスク

④職場要因

  • 過重労働

  • 人間関係・ハラスメント

  • 配置や役割のミスマッチ

⑤本人の希望

  • 休みたいのか

  • 配慮があれば働けるのか

  • 医療機関受診状況

産業医はこの情報をもとに、就業制限や休職の必要性を整理します。


5. 初動で企業が避けるべき落とし穴

「休職=本人の問題」と決めつける

職場要因を無視すると再発率が高くなります。

制度説明を急ぎすぎる

初回面談で「休職手続き」の話だけになると本人は追い詰められます。

主治医任せにする

主治医は治療の専門家であり、職場調整は企業と産業医の役割です。


6. 初動対応のゴールは「整理と次の一手」

初動の段階で企業が達成すべきことは3つです。

  1. 本人の安全確保

  2. 状況の事実整理

  3. 産業医面談と医療受診につなぐ

この3つが整えば、休職か就業配慮かの判断は次のステップで適切に行えます。

まとめ:企業の初動対応で休職の結果は大きく変わる

従業員から「休職したい」と訴えがあったとき、企業側が最初に取る行動は、その後の経過を大きく左右します。

この場面で重要なのは、休職をすぐに決めることでも、本人を説得することでもありません。

初動で企業が行うべきことは、以下の3点に集約されます。


初動で企業が必ず押さえるべき3つの柱

①安全の確保(緊急性の確認)
希死念慮や強い混乱が疑われる場合には、迅速な医療的対応が必要です。

②状況の整理(事実確認)
いつから不調が続いているのか、業務負荷や職場要因があるのかを丁寧に言語化します。

③産業医との連携(就業判断につなぐ)
休職判断は企業単独で行うものではなく、産業医面談を通じて就労機能を評価し、適切な対応を決めていきます。


「休職対応」は制度ではなく信頼のマネジメントである

休職対応は単なる手続きではありません。

企業が誠実に初動対応を行うことで、

  • 従業員が安心して治療と回復に向かえる

  • 職場への信頼が守られる

  • 復職後の再発リスクが低下する

  • 組織としての安全配慮義務が果たされる

という重要な成果につながります。

反対に初動を誤ると、

  • 本人が追い詰められる

  • 職場不信が深まる

  • 長期休職・離職につながる

  • 企業側の対応責任が問われる

といった事態にも発展しかねません。

だからこそ「最初の一歩」を正しく踏むことが産業保健の核心です。


次回(シリーズ②):「記録と判断プロセス」が企業を守る

初動対応の次に必ず問題になるのが、

  • どこまで記録を残すべきか

  • 主治医の診断書と産業医判断をどう整理するか

  • 本人の希望と会社の制度をどうすり合わせるか

  • 後から揉めないために企業が整えるべき型とは何か

という実務的な論点です。

次回の記事では、

「記録と判断プロセスの重要性:後から揉めない休職対応の型」

を、産業医実務として具体的に解説します。

休職対応は初動だけで終わりません。
企業として正しく支援し、制度として機能させるために、ぜひ続編もご覧ください。


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