従業員から「休職したい」と訴えがあった際、初動で安全確保と産業医面談につなげることが第一歩です。
しかし実務上、次に必ず問題になるのが
・どこまで記録を残すべきか
・主治医の診断書と産業医判断をどう整理するか
・本人の希望と会社制度をどうすり合わせるか
・後から揉めないために企業が整えるべき型とは何か という「判断プロセス」の部分です。
休職対応は感情的な問題になりやすく、企業の説明責任や安全配慮義務も問われます。
だからこそ重要なのは、属人的な対応ではなく再現性ある型として整備することです。
本記事では、産業医としての視点から「揉めない休職対応」を実現するための記録と判断の基本を解説します。
休職対応で揉める原因は「判断の曖昧さ」である
休職対応が後から問題化する典型パターンは、
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本人は「会社に休職を拒否された」と感じている
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会社は「制度上必要な手続きを説明しただけ」と考えている
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主治医は「休養が必要」と書いている
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産業医は「就業配慮で可能」と判断している
というように、立場ごとの判断が整理されないまま進むケースです。
ここで重要なのは、休職対応には3つの軸があるということです。
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医療的判断(主治医)
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就労可否判断(産業医)
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制度運用判断(企業・人事)
この役割分担を明確にしないと、必ずズレが生じます。
記録は「企業と従業員を守る安全装置」である
記録というと企業側の防衛のように聞こえるかもしれませんが、本質は違います。
記録は、
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本人の訴えを正確に残す
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適切な支援を行った証拠となる
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復職支援の基礎資料になる
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後からの誤解を防ぐ という意味で、従業員にとっても重要です。
特に大企業では担当者交代も起こるため、「口頭だけで進めた対応」は必ず破綻します。
どこまで記録を残すべきか(最低限の項目)
企業が最低限残すべき記録は以下です。
①訴えの内容(本人の言葉)
「休職したい」「眠れない」「限界」など
※評価ではなく事実として記載
②面談日時と同席者(誰が、いつ対応したか)
③確認した事実
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不調の経過
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業務負荷
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勤怠状況
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安全リスクの有無
④会社として提示した対応
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産業医面談の案内
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医療受診勧奨
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就業配慮の選択肢
⑤次回アクション
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面談予定
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必要書類
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フォロー担当者
ここで重要なのは「診断を書く」のではなく、あくまで企業としての事実記録に徹することです。
診断書と産業医判断をどう整理するか
休職対応で混乱しやすいのが診断書の扱いです。
主治医の診断書にはしばしば「○ヶ月の休養を要する」と書かれます。
しかし産業医の役割は診断ではなく、就労可能性の評価(就業判定)です。
つまり企業が整理すべきは次の構造です。
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主治医:治療上の休養必要性
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産業医:職場での就業可否判断
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会社:制度上の休職・配慮決定
主治医が「休養」と書いても、職場調整で就業可能な場合もあれば、逆に診断書が軽くても職場では危険な場合もあります。
企業として重要なのは、診断書を絶対視するのではなく、産業医判断を組み合わせて決定することです。
本人の希望と会社制度をどうすり合わせるか
休職対応では以下のようなケースが多く見られます。
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本人は「すぐ休みたい」
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会社は「制度に沿った手続きが必要」 というギャップが生まれます。
このとき企業が取るべき姿勢は希望を否定せず、制度として整理することです。
例:「休職を否定しているのではありません。制度上、産業医面談と診断書確認を経て正式に決定します。その間は安全確保のため就業配慮を行います。」
この説明があるだけでトラブルは激減します。
後から揉めないために企業が整えるべき“型”
休職対応を属人的にしないために、企業が整備すべき基本型は以下です。
型① 初動面談 → 記録 → 産業医面談
(最初の流れを固定化する)
型② 判断の分離
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医療判断(主治医)
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就業判断(産業医)
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制度判断(会社) を混同しない
型③ 文書化された説明
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休職制度の流れ
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必要書類
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復職プロセス
を事前に共有する
型④ 復職まで見据えた支援
休職はゴールではなく復職支援のスタートである
まとめ:休職対応は「結論」ではなく“判断プロセス”で決まる
休職対応で企業が最も注意すべきなのは、休職させるか否かという結論そのものではありません。
本当に重要なのは、その判断に至るまでのプロセスが整理され、説明可能な形で運用されているかです。
休職対応が後から揉めるケースの多くは、
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判断基準が曖昧だった
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記録が残っていなかった
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主治医と産業医の役割が混同されていた
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本人への説明が不足していた
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担当者ごとに対応が変わっていた
という「型の不在」から生じます。
だからこそ企業が整えるべきポイントは明確です。
企業が押さえるべき実務の基本5点
①訴えは必ず事実として記録する
本人の言葉、面談日時、確認事項、会社の対応、次のアクションを残すことが基本です。
記録は企業防衛ではなく、従業員支援と信頼維持の土台になります。
②判断軸を3つに分けて整理する
休職対応:
主治医=医療的判断、産業医=就労可否判断、企業=制度運用判断
という役割分担があります。混同すると必ず混乱します。
③診断書を絶対視せず、産業医評価と組み合わせる
④本人の希望を否定せず、制度として説明する
⑤属人的対応を避け、“企業の型”として運用する
初動→産業医面談→判断→制度説明→復職支援
この流れを標準化することが、大企業に求められる産業保健体制です。
休職はゴールではなく、復職支援のスタートである
休職対応は単なる制度処理ではありません。
適切な初動と判断プロセスが整えば、
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従業員は安心して回復に向かえる
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復職後の再発が減る
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職場の信頼が守られる
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企業の安全配慮義務が果たされる
という成果につながります。
休職対応とは、企業の危機管理であると同時に、最も重要な産業保健活動の一つです。
次回(シリーズ③)では、実務で最も難しい論点である
「主治医・産業医・会社の連携:情報共有のポイントと注意点」
を具体的に解説します。