知らずにやっているかもしれないNG習慣
「特別に不健康なことはしていないのに、気分が安定しない」
「忙しいだけなのに、最近イライラや不安が増えた気がする」
こうした変化の背景には、セロトニンを乱してしまう日常的な食事習慣が隠れていることがあります。重要なのは、セロトニンは一時的に増減するものではなく、毎日の食事リズムや内容の積み重ねで安定性が決まるという点です。ここでは、多くの人が無意識に行っている「セロトニンを乱しやすい食事パターン」を、論文知見をもとに解説します。
朝食抜きの影響― セロトニン合成のスタートスイッチが入らない
朝食を抜く習慣は、セロトニンにとって最も影響の大きい要因の一つです。セロトニンは日中に多く合成され、夜になると睡眠を促すメラトニンへ変換されます。このリズムを作るためには、朝の栄養摂取と日光刺激が不可欠です。
研究では、朝食欠食者は血中トリプトファン濃度が低く、日中のセロトニン機能が低下しやすいことが示されています。また、朝食を摂らない人ほど、日中の集中力低下、抑うつ傾向、不安感が強いという関連も報告されています。
朝食を抜くと、
・トリプトファン供給が遅れる
・セロトニン合成のリズムが乱れる
・夜のメラトニン分泌にも影響する
という連鎖が起こりやすくなります。「朝は食欲がない」こと自体が、セロトニン低下のサインである場合も少なくありません。
昼の過度な糖質制限― セロトニンが脳に届かなくなる仕組み
昼食で極端に糖質を避ける習慣も、セロトニンを乱す大きな要因です。トリプトファンは脳に運ばれる際、他のアミノ酸と競合しますが、炭水化物摂取によるインスリン分泌があることで、相対的にトリプトファンが脳へ入りやすくなります。
そのため
高タンパク・極低糖質やサラダと肉だけの昼食
といった食事では、トリプトファンを摂取していても、脳内セロトニン合成が進みにくい状態になります。
実際に、低炭水化物食を続けた群では、気分の落ち込みや緊張感が増しやすいことが報告されています。特に、ストレス感受性の高い人では、糖質制限による精神面への影響が顕著になりやすいと考えられています。
夜遅い高脂肪・高アルコール― セロトニンと睡眠の分断
夜の食事内容は、セロトニンからメラトニンへの変換に大きく影響します。特に、就寝直前の高脂肪食やアルコール摂取は、睡眠の質を低下させ、結果的に翌日のセロトニン機能にも悪影響を及ぼします。
アルコールは一時的にリラックス感をもたらしますが、実際にはセロトニン受容体機能を阻害し、夜間の中途覚醒や浅い睡眠を増やすことが分かっています。また、高脂肪食は消化に時間がかかり、体内リズムを乱すことでメラトニン分泌を抑制します。
「寝酒がないと眠れない」「夜はしっかり食べないと落ち着かない」という状態は、セロトニン‐メラトニンの自然な流れが崩れているサインとも言えます。
カフェインと不安・睡眠の関係― 覚醒の代償としてのセロトニン低下
カフェインは、覚醒や集中力を高める一方で、摂取の仕方によってはセロトニン機能に負荷をかけます。カフェインはアデノシン受容体を遮断することで覚醒を維持しますが、その結果、交感神経活動や不安感を高めることがあります。
研究では、高用量のカフェイン摂取が不安症状の増強や睡眠潜時の延長と関連することが示されています。特に午後以降の摂取は、夜間のメラトニン分泌を抑制し、睡眠の質を低下させます。
「眠れない → 不安が増す → さらにカフェインに頼る」
という悪循環が生じやすくなります。
NG習慣に共通する本質
ここまで紹介した習慣に共通するのは、「短期的な楽さ」を優先している点です。
しかし、セロトニンは短期的な刺激では安定しません。
リズム・材料・回復がそろって初めて、安定して働く神経伝達物質です。
まとめ:気づかないNGがセロトニンを削っている
セロトニンを乱す食事パターンは、特別な暴飲暴食ではなく、「多くの人が普通だと思っている習慣」の中に潜んでいます。だからこそ、気づいた時点で修正する価値があります。
次回は、これらのNGを踏まえたうえで、
「セロトニンを整える1日の食事モデル(朝・昼・夜)」
を具体的に解説していきます。
引用文献
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