現代社会を生きていると、「私はストレスに弱いのかもしれない」と感じる場面が誰にでもあります。仕事の締め切り、上司との関係、家庭の役割、未来への不安…。同じ出来事でも、人によって受け取り方やダメージの感じ方が大きく違うのはなぜなのでしょうか。
それは決して「性格の問題」だけではありません。実は、最新の脳科学・遺伝学の研究によって、ストレスに対する反応性には明確な個人差の仕組みがあることが分かってきました。その中心にあるのが、脳の中で働く神経伝達物質のひとつ セロトニン です。
この記事では、ストレスに敏感な理由と、その弱さを補い日々の生活を楽にする方法を、科学的にわかりやすくまとめてお伝えします。
セロトニンの役割:心の安定・ストレス耐性・睡眠の司令塔
セロトニンは、よく「幸せホルモン」と呼ばれますが、その役割はもっと広く深いものです。
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気分の安定
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ストレスへの耐性
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睡眠リズムの調整
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衝動のコントロール
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集中力や意思決定
これらすべてに関わる、まさに“心の司令塔”のような存在です。
セロトニンが過度な状態や不足しているとどのような症状が出るか別の記事にありますのでぜひ読んでみてください。
では、このセロトニンは何によって左右されるのでしょうか?
セロトニン輸送体遺伝子(5-HTTLPR)とストレス反応性の科学
セロトニンの働きを大きく左右するものとして注目されているのが、
セロトニン輸送体遺伝子(5-HTTLPR) です。
この遺伝子には大きく分けて2つのタイプがあります。
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L 型(ロング):セロトニンの働きを比較的保ちやすい
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S 型(ショート):環境ストレスの影響を受けやすい
S 型は、脳がストレス刺激に対して強く反応しやすく、同じ出来事でも落ち込みや不安が生じやすいという特徴があります。
つまり、「ストレスに弱い」と感じる背景には、こうした脳の反応性の違いが関わっている可能性があるのです。
日本人にSアレルが多い理由と欧米との違い
重要なのは、日本人はこの Sアレルの保有率が非常に高い という事実です。
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欧米のSアレル保有率:約40%
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日本人のSアレル保有率:約80〜90%
つまり、多くの日本人はストレスの影響を受けやすい脳の特徴を持っている可能性があります。
もちろん、これは「日本人が弱い」という意味ではありません。
むしろ、繊細で周囲に気を配れる、人の感情を読み取れる、慎重に判断できるといった強みとしても働きます。
ただし、ストレスが多い現代では、この繊細さがしんどさとして現れやすくなるのです。
ストレス脆弱性は“運命”ではなく“調整できる体質”である
ここまで読んで、「遺伝で決まるならどうしようもないの?」と思う方もいるかもしれません。
ですが安心してください。
セロトニンの働きは今までの記事でも触れていますが
栄養・睡眠・運動という生活習慣で大きく改善できます。
遺伝子は変わりませんが、脳の働きは日々の行動でいくらでも調整できます。
これは研究でも明確に示されている事実です。
生活習慣がセロトニン機能に与える3つの影響(栄養・睡眠・運動)
ここからは、誰でも今日から始められる「セロトニン機能を高める生活習慣」を紹介します。
① 栄養:セロトニンの“材料”をしっかり摂る
セロトニンは、トリプトファンというアミノ酸から作られます。
研究で示されている事実:トリプトファン摂取(1000mg/日など)が
Sアレルキャリアの気分悪化を抑える
ストレス中のネガティブ感情を軽減
睡眠の質を改善
という効果が確認されている。
実際にトリプトファン多く含む食品
肉・魚、卵、大豆製品、乳製品、ナッツ類などです。
特に日本人に多いSアレル保有者では、トリプトファン摂取によってストレス反応の軽減や睡眠の質改善が報告されています。
② 睡眠:脳を回復させる“最強のメンテナンス”
睡眠不足はセロトニン機能を低下させ、ストレス脆弱性を一気に高めます。
Sアレル型の人は、睡眠の乱れに特に影響を受けやすいことが分かっています。
Sアレルは
入眠困難・中途覚醒・日中の眠気・ストレス反応の亢進
と関連しており、睡眠の脆弱性が指摘されている。
できる対策としては:
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寝る前のスマホを控える
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光環境を整える(寝室は暗く)
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寝る時間をなるべく一定にする
ほんの少しの工夫で、翌日の心の安定が大きく変わります。
③ 身体活動:セロトニンを活性化する“最強の習慣”
運動は、セロトニン研究の中でも最も確実な効果がある方法です。
研究では、
・Sアレル保有者は、身体活動量が低いと抑うつ症状が強く出る
・しかし身体活動量が高いと→ Sアレルのリスクはほぼ「ゼロ」まで中和される
という非常に明確な結果が複数報告されている。
しかも激しい運動である必要はなく、次のような軽い活動で十分です。
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20〜30分のウォーキング
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エスカレーターより階段を選ぶ
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通勤で一駅歩く
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こまめに立ち上がる
これらを習慣にするだけで、セロトニンが活性化し、
「ストレスに強い脳」へと変わっていきます。
まとめ:科学を味方につけてストレス耐性を高める
日本人の多くが持つSアレルは、ストレスを受けやすい体質という側面がありますが、
それは弱さではなく特徴です。
そしてその特徴は、
栄養・睡眠・運動という生活習慣で十分に補うことができます。
科学的に正しいセルフケアを積み重ねれば、
誰でも「ストレスを受けにくい脳」へと変わることができます。
今日できる小さな一歩から、あなたのストレス耐性を育てていきましょう。